手の外科
原則として末梢の虚血がなく、皮膚欠損がなければ神経損傷、腱断裂は深夜時間帯では緊急手術は行わない。スタッフの監督のもと、救急室で創を洗浄して縫合し患肢の安静を指示し、休日を除いた日勤時間帯に整形外科スタッフにコンサルトする。腱断裂はできるだけ1週間以内に手術する。知覚神経損傷は
emergency ではない。必ず麻酔をする前に神経損傷の有無を調べカルテに記載しておくこと。
緊急手術の適応となる疾患
術前処置
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すぐに NPO の指示を出すこと。
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手の正面、斜位のレントゲンをオーダーし直ちにコンサルト。
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できるだけ早く抗生剤を始める。
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外傷の場合、cefazolin をテストし、直ちに大人の場合 1g、小児の場合 25mg/kg
iv する。
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人咬傷による化膿性関節炎 (MP 関節、clenched fist injury) に対しては cefoxitin
を iv する。( dose は cefazolin と同じ)
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過去の破傷風免疫の状態に応じた tetanus prophylaxis の指示を出す。
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切断指
再接着術の適応:すべて再接着 るいは皮弁による被覆の適応となり得る。安易に救急室で断端形成しないこと。
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皮膚欠損が り神経、血管、腱が露出している症例
早急に vital structure の被覆を要する。
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血管損傷で末梢組織が虚血状態になっている症例
血行再建術の適応。出血している血管は決して鉗子でクランプしないこと。局所を圧迫すれば必ず止まる。圧迫しながらスタッフを呼び、露出血管が有れば手術室より
microvascular clamp を借りてきてクランプする。鉗子でクランプして血管を圧座すると
primary anastomosisが不可能となる。
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化膿性屈筋腱腱鞘炎
Kanavel の4徴==屈筋腱に沿った圧痛、患指の腫脹、患指の軽度屈曲位、受動的に患指を伸展すると激痛を訴える。(最も重要)以上を認めれば直ちに
OR にて I&D (incision and drainage) の適応。
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MP 関節化膿性関節炎
ほぼ全例、拳で人の口を殴って歯が MP 関節を破って感染する (clenched
fist injury) 。MP 関節のすぐ表面に傷が り関節を痛がっていたら疑うこと。見た目は大したことがないのが大きな落とし穴。MP
関節に axial pressure を加えるように長軸方向に指を押さえつけながら基節骨と中手骨の関節面をこすり わせるように捻ると痛みを訴える。History
と症状で疑った場合はすぐに OR で I&D の適応。
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手の深部組織感染
手の刺創、化膿性屈筋腱腱鞘炎、 るいは周囲組織の感染の波及により起こる。手の痛み、腫脹を伴う。DM
の患者は っという間に感染が広がり重篤になるため要注意。すぐに OR
で I&D 。
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コンパートメント症候群
ハブ咬傷、ギプスがきつすぎて圧迫されたり、服毒で長時間腕を下にして圧迫し倒れていた場合などに起こる。組織圧が毛細管潅流圧を越える
と(40 mm Hg<)筋肉の血行が途絶える。組織の血流が途絶えても、末梢動脈拍動は触れる。痛み、muscle
の passive stretch による痛み、知覚低下(しびれ)、筋力低下をみる。組織圧が
30 - 40mmHg を越えると fasciotomy の適応。