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医療法人 一文会 仲本内科・小児科

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小児科 奥間 稔  文責

b.注意したい子どもの感染症

 子どもが、診療所(病院)を受診する症状で最も頻度が高いのは『発熱(体温上昇)』であり、その原因としてはいわゆる『カゼ症候群』が大部分です。 しかし、それはあくまでも一般論であり、保護者の皆様特に周囲に気軽に相談できる家族や親せきがいない方々にとっては、不安が先行し【発熱(体温上昇)出現⇒こわい病気⇒即日、医療施設受診】という対応となることもあるでしょう。 その際、外来および救急受診がすんなり行けばいいのですが、昨今社会状況の劇的な変化(世界的なコロナ感染症の大流行などの影響)や医療状況の著しい変化なども相まって、そう容易ではありません。
 24時間対応可能な病院はもちろんのことそうではない診療所でも、日中の外来受診に際しては予約が必要なことが多く(医療施設内においてできるだけヒトとヒトの接触を減らし感染症の危険性を低下させる、 待ち時間を短くする)、そのため予約外受診では長い待ち時間が発生しているのも事実です。そのことは、患者側はもちろんのこと医療者側にとっても大きな課題になっています。

 そこで、外来(救急)受診頻度が最も高い乳幼児を念頭に、①発熱、②熱性けいれん、③重要な子どもの感染症、についてできるだけわかりやすく説明したいと思います。 できる限りガイドライン(医師間で共有されている標準的な知識を文書にしたもの)に準じて説明いたしますが、一部に私見を含むことをあらかじめご容赦下さい。
 そして、この情報提供が、保護者の皆様が医療施設を受診する際、少しでも参考になれば幸いです。


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①発熱
 体温が何℃以上あれば、『発熱』というのでしょうか?ちなみに、日本人おける腋の下で測定した体温の平均値は、36.89±0.34℃とする報告がありますが、 年齢(月齢)差,個人差および日内変動(起床時に最も低く、夕方から夜間にかけて高くなる)もあるため、杓子定規に発熱を定義するのは困難です。
 しかし、一般的にはわきの下で測定した体温が38.0℃以上であれば、小児では明かな体温上昇としてよいとされています。
 18-19世紀に解熱剤が開発された当時は、発熱は病的な状態なのですぐに解熱剤で是正すべきとの考えが当然でしたが、 最近では、様々な研究の進歩により、体温上昇は身を守るための生体防御反応のひとつとして理解されるようになっており、発熱が軽度でほとんど苦痛を与えていない場合には解熱剤の必要はなく、むしろ与えない方がよいとされています。
 発熱が生体に有利だという根拠として、(ア)発熱により病原体(ウイルス)の増殖が抑制される、(イ)白血球の動きが活発になり、体内に侵入したウイルスを貪食(白血球内に取り込んで食べてしまい、無力化)する働きが活発になる、 (ウ)貪食することにより、免疫機能が活発になる、などが考えられます。
 このような事実を踏まえた上で、発熱およびその対処法に関するKey Pointsをまとめると以下のようになります。
・発熱は、病気ではなく生理的つまり当然の反応である
・発熱自身が、脳に障害 (知能障害や発達障害) を及ぼすことはない
・発熱が、病気を増悪させるという証拠はない
・発熱時の最も大切な対処法は、水分摂取励行と適切な安静である
・発熱があっても、睡眠中なら無理やり起こすことはない
・しかし、(軽度でも)不機嫌を呈するなら、解熱剤投与を!
・解熱剤投与後の体温の変化によって、原因がウイルスか細菌(ばい菌)かを  断定することはできない
・解熱剤の投与は、ガイドライン(日本も諸外国も同様)を守って
  
アセトアミノフェンとして体重1kgあたり10~15mgを使用する。
  
使用間隔は、4~6時間以上とし、1日量として60mg/kgを限度とする。

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②熱性けいれん:熱性けいれん診療ガイドライン2023
 熱性けいれんは、『おもに生後満6カ月から満60カ月までの乳幼児に起こる発作性疾患(けいれん性,非けいれん性を含む)で、 髄膜炎などの中枢神経感染症などがみられないもので、てんかんの既往のあるものは除外される』と定義されています。
 わが国では、熱性けいれんの頻度は7~11%とされ、諸外国(2~5%)より高率です。熱性けいれんの再発率は,一般に1回目の1/3が2回目を起こし、そして2回目を起こすとその1/3-4程度で3回目を起こすといわれています。
 しかし、再発率は再発予測因子の有無により大きく異なり、1つも認めない場合には2年以内の再発率は14%と比較的低率ですが、陽性因子が多いほど高率になります。

熱性けいれんの再発予測因子
(ア)熱性けいれんの家族歴(両親,同胞)
(イ)若年発症(生後12カ月未満)
(ウ)発熱⇒発作まで短時間(1時間以内)
(エ)発作時非高体温(39℃以下)
 したがって、以上の因子を多く有する場合には、小児神経専門医によるアドバイスが必要と思われます。
 今回の熱性けいれん診療に関するガイドラインにおいて、診療方針の重要改訂として、以下の点などがあります。
1.来院時に熱性けいれんが止まっている場合に、外来でジアゼパム坐剤を使用した方がよいか?
2.熱性けいれんの再発予防のために解熱剤を使用すべきか?
3.熱性けいれんの既往がある小児は予防接種をうけてよいか?
4.熱性けいれんの既往がある小児に予防接種を行う場合、最終発作から経過観察期間をどれくらいあければよいか?
以上のような質問に対して、適切な推奨が呈示されています。もし、心あたりの方は小児神経専門医(あるいはかかりつけ医)を受診した際におたずねください。


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③重要な子どもの感染症
1.かぜ(上気道炎)
 ・かぜは、秋から冬にかけて比較的多いものの、年中みられます
 ・原因は、ほとんどがウイルスによるもので多くのウイルスが関します
  ⇒したがって、抗菌薬は効果がない。しかし、受診した保護者の44%がかぜに抗菌薬が有効であると考えており、30%がその処方を希望するという調査結果があります
 ・保護者の60%以上が、咳止め薬や鼻汁・鼻閉に対する薬剤を希望します
 (私見:乳幼児に対する安易な咳止めや鼻汁・鼻閉に対する薬剤の処方には、様々な弊害がある)
 ・治療の基本は、適切な水分補給(塩分・糖分も)と休息です
 ・インターネットでは、かぜ?の時は耳鼻科受診を勧めているようですが、そうではなく小児科医を受診してください
 (のどや耳だけを診るのではなく,全身状態をみる必要があります)
 ・処方内容は、小児科医でも大きく異なり、受診に際しては診察した医師の説明を聴いて、疑問があれば質問・相談しましょう!

2.RSウイルス感染症:厚労省RSウイルス感染症Q&A,日本小児科学会
 ・1歳までに50%,2歳までにほぼ100%の乳幼児がかかる
 ・感染経路は、主に『接触感染』であり、飛沫感染もあるが空気感染はしない
 ・潜伏期間は、2-8日(典型的には4~6日) ・症状としては、鼻汁や咳,ゼーゼー(喘鳴)および軽度の体温上昇が主です
  初めて感染した乳幼児の約7割は1週間程度の上気道炎症状で自然軽快しますが、約3割が咳こみ,ゼーゼー(喘鳴)など呼吸状態の悪化を認めます
 ・重篤な合併症として、無呼吸発作、呼吸不全および急性脳症などがあります
 ・機嫌がよく、哺乳がいつも通り良好であれば、慌てず自宅で様子をみましょう
 ただし、寝づらそうだったり、哺乳量が明らかに減少している場合には、医療機関の受診が必要です
 ・特別な治療法はなく、症状に応じて対処(酸素投与,点滴,呼吸管理)です
 ・重症化リスクの高い乳幼児には、主治医があらかじめ説明があるはずです
 ・迅速検査(5~15分程度で判定)の実施は必須ではありません
 (厚労省のQ&Aには記載なし 当院では、迅速検査は実施していない)
 ・最近妊婦に対するRSワクチンが使用可能となり、その接種により生後6カ月までの乳児における重症RSウイルス下気道感染症に対して69.4%有効との報告があります
 ・それに対して出産後に、感染すると重症化する可能性の高い乳児に対して注射で予防する方法もあります

 3.百日咳
 ・百日咳菌とよばれる細菌が原因です
 ・ワクチン未接種児や接種未完了児に多くみられます
 ・発熱はあまりないため、初期では軽いかぜと見分けがつきにくいです
 ・典型的な症状としては、激しい咳こみと咳こみ後の顔面紅潮などが長期間持続することですが、数か月未満の乳児ではせき込み後に無呼吸(呼吸しなくなる) がみられたりするなど、重症化する可能性があります

 4.麻疹(はしか)
 ・空気感染によって伝播する感染力が極めて強いウイルスウイルス感染症です(1人から12~18人に伝染)
 ・発疹が出現する4日程度前から、出現後4日程度まで感染性があります
 ・症状出現後ごく初期には、かぜ症状と区別がつきにくいことがあります
 ・発疹(耳介後部⇒頚部・顔面⇒体⇒手足)が出現し、拡大
 ・発疹同士が癒合(個別に出現した発疹が重なり合う)
 ・通常は、7~10日程度で徐々に回復します
 ・肺炎や意識障害・けいれんなど重い合併症で、致命的なになることがあります

 5.水痘(みずぼうそう)
 ・空気感染によって伝播する感染力が極めて強いウイルス感染症(1人から10人程度に伝染)
 ・発疹が出現する2日前からすべての発疹がかさぶた(痂皮化)になるまで感染性があります
 ・発疹が、頭部にも出現するのが、他の発疹性疾患と違う特徴
 ・症状としては、発疹だけでなく肺炎や脳炎,細菌感染症などの合併症がある
 ・合併症がなければ、自然経過で軽快するが、日本では積極的に抗ウイルス薬が使用されています(個人的には、相談して処方します)

 6.エンテロウイルス
 ・このウイルスによる代表的な疾患に、①ヘルパンギーナ,②手足口病があります
 ・両者とも、潜伏期間は3~6日です
 ・両者の違いは発疹の出現部位であり、①は口蓋垂近辺(のどぼとけ),②は文字通り手足そして口腔内が典型であるが、膝周囲や臀部など様々な部位に発疹が出現します
 ・治療としては、特異的なものはなく対症療法(症状に応じて対処)であり、5~7日程度で自然治癒します
 ・症状が軽度で全身状態良好の場合には、登園停止は必要ありません


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